外食産業・飲食業界に、そもそもAIは必要なのか
仕入れた食材は、使わなければ数日で捨てる箱に入ります。手を入れる先も、そこから選びます。
同じ見立てを週に何度立て直しているか。そして外したぶんが、 その日に捨てる箱に入るのか、翌週の客の入りに出るのか 。外食業界のAI活用は、この二つが重なる仕事から組むと空振りしません。
先に手が届くのは、次の三つです。
- 捨てた分と品切れの記録から、次の週に何をいくつ頼むかを出し直す作業
- 前に出した限定の一品の出数と原価をたどり、次の候補を絞る作業
- 時間帯ごとに何人立てばいいかを、来た客の記録から先に出す作業
三つとも、照らす先が 自社の手引書と前の週の伝票 にあり、店を開けるたびに同じ形で戻ってきます。
反対に、出す直前の一皿を見て、そのまま出すか作り直すかを決める場面にAIの置き場所はありません。揚がりの色も焼き目も、同じ手順を踏んでもその日で変わります。
届いた食材を受けるか突き返すかも同じです。伝票の等級は合っていても、箱を開けた中身が使えるかどうかは、触って匂いを確かめた人にしか決まりません。
ただし、この線がどこを通るかは2業種でひとくくりにできません。同じ「発注」という語が、ファーストフード関連では全店共通の規格品を数える作業を指し、居酒屋・バーでは今朝の魚を何本引くかの判断を含みます。どこが分かれるのかを、次に見ます。
同じ外食産業・飲食業界でも、業種によってここが違う
外食という括りで共通しているのは、仕入れたものが数日で価値を失う一点だけです。大きく分かれるのは、 献立と値段を誰が決めるか です。ここで、店に残る記録が全店そろった様式になるか、店ごとに別の書き方になるかが変わります。
ファーストフード関連では、商品も価格も本部が決め、店はそのとおりに出します。衛生チェック表も日報も、全店が同じ欄を埋めた形で集まります。居酒屋・バーはその日の仕入れで黒板が変わるため、同じ売上でも中身の残り方が店ごとに違います。
客が一組で使う時間も正反対です。ファーストフード関連は短い滞在が数多く続き、時間帯ごとの人数が読めれば足ります。居酒屋・バーは宴会の一件で人数もコースも動き、 その一件が固まるまで仕入れも仕込みも止まります 。
食材の持ち時間も別です。ファーストフード関連が扱うのは規格の決まった品で、日持ちの管理まで手順に書いてあります。居酒屋・バーには翌日へ回せない品目が混ざり、発注の見直しが毎日の仕事になります。
| 事業の形 | AI活用が効きやすい業務 | 特に負荷が高い工程 |
|---|---|---|
| 直営店を自社で回すファーストフード関連 | 巡回と覆面調査の所見から、続いている指摘を抜き出す | 店舗巡回・指導 |
| 加盟店の多いファーストフード関連 | 加盟店から届く問い合わせへの一次回答の下書き | 加盟店支援 |
| 宴会・団体を受ける居酒屋・バー | 前の宴会の控えから、次に声をかける相手を挙げる | 予約受付 |
| カウンター中心の居酒屋・バー | 品目ごとの収益性を並べ替える | 仕入れ・発注 |
2業種のうち、同じ判断が一人のところへ多く集まるのはファーストフード関連です。担当者一人が受け持つ店の数だけ、巡回の所見も日報も加盟店の相談も、別々の様式で同じ机に届きます。
外食産業・飲食業界に共通するAI活用、3つ
三つとも、外せば捨てる箱か翌週の客の入りに出る仕事です。しかも仕込みの前と営業のあとに、2業種そろって戻ってきます。
捨てた分を、次の発注の数へ返す
動き出すのは、週の棚卸しと廃棄の入力が締まった時点です。AIは品目ごとの出数、捨てた分と品切れで断った件数、曜日と近隣の行事の記録を照らし、取りすぎた品目と足りなかった品目を分けます。どこからを取りすぎと見るかの線は、自社の手引書の側に設定しておきます。
出てくるのは次週の発注量の下案で、発注表に品目ごとの行として入り、発注の担当へ業務チャットで通知が出ます。前の週の伝票をめくって足し引きしていた手順が、 多い少ないの印が付いた状態から直す 形に変わります。数を確定するのは、現物の残りを見た発注の担当です。
下案を出す単位が違います。ファーストフード関連は規格品なので全店同じ数字が使えますが、居酒屋・バーは翌日へ回せない品目が混ざるため、店ごとに出し直すことになります。
次の限定の候補を、前の一品から絞る
二つめが動くのは、限定で出していた一品の販売が終わった日です。AIはその品の出数の推移と原価率、使った食材の仕入値の動き、同じ季節に前へ出した限定品の記録を読み、次も出せる候補を先に挙げます。
挙がった候補は企画書の下書きとして保管先に保存され、商品の担当と店長が献立を決める会議の前に開きます。思いついた案を持ち寄って会議で比べていた進め方が、 原価と出数の付いた候補を削る 作業になります。
見るところが入れ替わります。ファーストフード関連は全店で同じ期間に出すので調理の手順が増えないかまで見ますが、居酒屋・バーは黒板で差し替えるため、候補の数そのものが要ります。
時間帯ごとに要る人数を、先に出す
三つめの起点は、翌週のシフト希望が締め切られた時点です。AIは時間帯ごとの客数と伝票の枚数、曜日と近隣の行事、持ち場ごとに何人立てるかの決めごと、各人の入れる時間帯と経験を突き合わせ、持ち場別の人数の案を並べます。
案はシフト表の素案として表計算ソフトに入り、店長が開きます。希望の紙を並べて空いた枠を埋めていた組み方が、 入った案から外していく 順に変わります。外した枠には理由が残ります。
山の来かたが別です。ファーストフード関連は昼と夕方に決まった形で立ちますが、居酒屋・バーは宴会の入り方しだいで日ごとに山が動きます。
業務に組み込むまでの4ステップ
一つめの発注の見直しだけで四つを通します。組み上げるものはなく、いま使う入力フォームと発注表のあいだに、行き来の順番を決めます。
1. 使う情報がどこにあるかを決める
増やす記録はありません。決めるのは、どこにあるものを読ませるかです。
- 毎日の廃棄をつける入力フォームの控え
- 棚卸しと納品の伝票を綴じた場所
- 品目ごとの出数がある売上の記録
廃棄の紙が厨房の壁にあるなら、写しをファイル保管サービスへ移します。
2. 何をきっかけに動かすかを決める
合図は、週の棚卸しが締まった時刻です。手が空いた日に開く進め方だと、客の多い週ほど後回しになり、いちばん捨てた週の数字が残りません。ファーストフード関連なら日報を送った後、居酒屋・バーなら仕入れの締めの翌朝です。
3. 判断の基準を設定しておく
書き出すのは、どこからを取りすぎと呼ぶかの線です。厨房に立つ人は箱の中身を見た瞬間に決めていますが、紙には現れません。
- 仕込んで売れ残った分と、傷んで捨てた分を同じ欄で数えるか
- 品切れで断った注文が何件続いたら足りないと見るか
- 天気や行事で外れた日を、次の見直しから除くか
この線は一度の話し合いでは出そろいません 。捨てた箱を見ながら、何週かに分けて書き足す工程です。一巡すれば、翌年の同じ季節は足すだけです。線の引き方も別で、ファーストフード関連は全店で一本、居酒屋・バーは店ごとに引きます。
4. 結果の戻り先と、確認する人を決める
下案は発注表の次週の欄に、品目ごとの行で入ります。 数字が並んだだけでは注文になりません 。発注の担当が締め切り前に厨房の現物と見比べ、動かした品目に理由を一行添えます。その一行が、次に線を直す手がかりです。
先に知っておきたい、つまずきやすい3か所
- 片方の業種で動いた形を、そのまま持ち込む :ファーストフード関連で組んだ発注の下案は、規格の決まった品を全店同じ数字で回す前提で作られています。そのまま居酒屋・バーへ移すと、翌日に回せない鮮魚まで平均の数で並びます。当日限りの品目を別の欄に分けてから移します。
- 持ち場に入れる人の一覧が古くなる :誰がどの持ち場に立てるかの控えは、働く人が入れ替わるたびに合わなくなります。去年のままだと、動かせない人数の案が毎週出てきます。新しく入った人の研修が終わった日に、持ち場の控えへ書き足す担当を決めておきます。
- 限定を出していた週を、通常の週と混ぜて数える :限定の一品が出ている間は、食材の出方も客数も普段と別です。混ぜたまま積み上げると、もう出していない品に引かれた候補が上がります。限定を出した週に印を付け、通常の週と分けて数える決まりにします。
外食産業・飲食業界のAI活用は、どこから考えればいいか
人の側に残したのは、出す直前の一皿を見て出すか作り直すかを決める場面と、届いた食材を受けるか突き返すかの判断でした。紹介した三つは、捨てる箱と翌週の客の入りに触れながら、 厨房に立つ前に終わる仕事 です。
ファーストフード関連が全店そろった様式で数えるものを、居酒屋・バーは店ごとに数え直すことになります。
はじめの一つは、仕込みの前にいちばん手が止まる工程から選びます。上の表で自分の店の形に近い行を見つけ、その記事へ進んでください。 読ませる廃棄の控えも伝票も、今日の締めで打ち出す紙にもう載っています 。

